日々紬

なんでもない日常を物語に。

長編執筆を楽しめるようになった話

 

こんにちは、紬こと世原久子です。

 

久しぶりの投稿の上に、名前が二つあってややこしいですね。

昨年ブックショートアワードで優秀賞をいただいた(とても嬉しい)のですが、その際の筆名を短編以上の作品では使うようになりました。どちらの名前にも愛着があるので、何と呼んでくださってもかまいません。

bookshorts.jp

 

さて、今回は長編執筆にまつわるお話です。

エントリのどれか、もしくはTwitterで書いたことがあるかもしれませんが、私は断続的とはいえ10年以上執筆をしているくせに、長編が書けない/書くのが辛いというタイプの書き手でした。5,000文字で息切れ、10,000文字いけたら奇跡みたいな感覚。

短編や140文字小説にも楽しさ、やりがいはあって、それを突き詰めればいっか! 無理なもんは無理だよね! と考えていたのですが、やっぱり長いのも書いてみたいなぁとひっそり思っていたのは事実でした。どれが上、とかではなく、なんでも書けた方が楽しいよね的なノリです。

そこから自分なりの努力や悪戦苦闘、定期的に心が折れるなど荒波を乗り越え、なんやかんや60,000字越えの執筆ができるようになりました。その中でなんと「これは……楽しい……?!」と思える瞬間すらでてきたのです。巧拙はともかく。

※基準はいろいろあると思いますが、40,000文字以上を長編、5,000文字以上を短編と捉えています。

 

まず、最初に変化を感じたのは140字小説の毎日投稿を始めてだいぶ経ったころ。具体的にどれくらいかはさすがに覚えていないのですが、1年以上だったことは確かです。

昔よりは語彙力が上がったのか、構成の組み立てに頭が慣れ始めたのかはわからないのですが、以前より短編小説を書くことが大変ではなくなってきました。

三浦しをんさんの『マナーはいらない 小説の書き方講座』を読んで基礎的なことを振り返ったり、気づきもしなかった視点を勉強しながら、140字小説コンテスト 一月の星々と前述したブックアワードに応募しました。

そしたら、なんと前者は佳作、後者は優秀賞。

note.com

 

わ~~~と思いました。

さっそく語彙力を失っていますが、もう本当に嬉しかったんです。自分が一番好きな物書きの領域で客観的な評価をいただけたことに、泣きそうな勢いで感動しました。拙い表現ですが、生きる希望みたいなものが少し強くなったほどに。

 

そこから「もしかしたら長編も書けるのでは?」と少し調子に乗った私。短編執筆時のあれこれを思い出しながら、長編のアイディア出しと構成に取り組み始めます。

とはいえ、きちんと長編を書くのはほぼ初めて。あまり無茶なことを自分に課すと早々に挫折してしまいそうな予感があり「書けるものを書く」というシンプルな目標を大切にすることにしました。

そしてある程度の構成を考えたところで、執筆に着手します。あまり設定は詰めすぎず、書きながらでしか生まれないものがありそうだと感じていたので、ざーっと書き進めました。

これは半分成功、半分失敗という感じでした。成功というのはこのノリでいったからこそ、きちんと最後まで書き上げられたこと。失敗は書き上げたあとの修正が大変だったこと……!

 

短編ではそれほど手間じゃなかったのでうっかりしていたのですが、長編だと少しの修正が全体の方向性に影響することを知ったり、連動して変えないといけないところを見落としてあとから焦ったり……。なにより全編のバランスをとるために読み返すだけで、とても時間をとられます……。(グチ)

 

でもまぁ、こういうのが楽しかったりもするんですけどね。そんなこんなで「長編ってやっぱり大変だ……」と思いつつ、同時に面白さや醍醐味のようなものにも気づく瞬間が増えていきました。

たとえば、手直ししていくうちにキャラクターが設定を踏み越えるような言動をして「こいつ、こんな人間だったのか」と驚いたとき。

たとえば、とあるシーンを掘り下げる中で、これまで知らなかった自分の思考や価値観に気がついたとき。

たとえば、なんてことない描写を書き込んでいく過程で、ふと救われたとき。

 

こういうのってストーリー次第では短編でも感じることなのかな? と疑問も湧いたんですが、長編だからこそ向き合う必要のある物語の重量やキャラクターの描写を通して生まれたように感じています。このあたりは人それぞれだろうし、きちんと言語化するのは自分でもまだ難しいのですが「やばい、これはクセになりそう……」と思う瞬間がいくつかありました。(なんか危ない発言ですね)

 

もちろんまだまだ拙いところばかりで、読み返すたびに「うわーっ、下手過ぎるー!」と叫びたくなることもしばしばです。

けれど、きっと書けば書くほど新しい視野をもらえる、そして自分なりには上手くなっていく(はず)とポジティブな予感もあります。どこかのタイミングで長編に客観的な評価をもらえたらそれはとてつもなく嬉しいけれど、自分の中で大切にできる軸が増えたということ自体が幸せで、なんだかこれからいろいろ楽しみです。

 

また、なにか知らないものを知ることができた時、ぜひご報告させてください。

読んでいただき、ありがとうございました。